椎間板ヘルニア|埼玉県|川越市|マリー動物病院

埼玉県川越市の動物病院、マリー動物病院

椎間板ヘルニア|埼玉県|川越市|マリー動物病院

原因

図1は背骨を輪切りにした簡易的な絵です。背骨の中には脳から続く脊髄神経(神経)が走行しています。背骨と背骨の間には、クッション材として働く椎間板が存在しています。図2は横から見た簡易的な絵です。

原因

原因

正常の椎間板は図3の様にその中心にゼラチン様物質(椎間板物質)を容れ、周囲を繊維輪で取り囲んでいます。これが正常な椎間板の状態です。

原因

一方、椎間板ヘルニアでは、図4の様に繊維輪の一部が破け、中心の椎間板物質が漏れ出た状態となります。漏れ出た椎間板物質は、その上を走行している脊髄神経を圧迫することになります。 さらにもう一つの病態として、図5の様に繊維輪は破けないものの繊維輪ごと変形することで脊髄神経を圧迫するケースもあります。この様に椎間板が脊髄神経を圧迫した状態が椎間板ヘルニアの原因です。

原因

原因

発症年齢と好発犬種

原因

私の経験に基づきますが、4歳から16歳の犬で椎間板ヘルニアの手術を行ってきました。重症度の低い犬であれば、より幅広い年齢で発症している事は想像に難くありません。好発犬種はミニチュアダックスフンドが最も多く、コーギーやビーグル犬など肢が短く、胴が長い犬種やフレンチブルドックやボストンテリアなどの短頭種にも多く好発することが知られています。太っている、痩せているなど体型と無関係に発症しており、遺伝的側面が重要と考えられます。

症状

椎間板ヘルニアの初期には、歩きたがらない、歩行がおかしい、キャンと鳴いたなどの症状が最初に認められます。進行すると、ヨロヨロしている、すぐに歩行できない、起立できない、前足だけで歩行している、後肢が動かないなどの症状を認めるようになります。これらの症状の変化は、神経障害の程度が進んでいることを意味します。また、これらの症状は常に順番として認められるものではなく、ゆっくり進行することもあれば、一気に歩行不能な状態まで進行することもあり、注意が必要です。

重症度(グレード)

重症度とは、脊髄神経の障害の程度とお考え下さい。この重症度は5段階で評価します。重症度は、神経学的検査や症状と密接に関連しています。椎間板物質が脊髄神経を圧迫する程度により、脊髄神経は機能を減退していきます。最初は痛みを感じますが、脊髄神経機能減退により最後は痛みを全く感じなくなります。また、神経学的検査は椎間板ヘルニアの重症度を決める重要な検査です。先程の痛みの認知もこの検査で確かめることが出来ます。この重症度と症状を照らし合わせて治療方針を決めます。

*排尿コントロールの喪失は、グレード4および5で喪失します。

診断

診断は鑑別診断が重要と考えます。鑑別診断にはいくつかの神経疾患が挙げられます。これはは必要のない手術を回避できることもあるからです。診断には、身体検査や神経学的検査、血液検査、レントゲン検査などを用いて総合的に判断します。

また、MRI検査など高度医療検査により脊髄神経の状態やどの部位に椎間板ヘルニアを起こしている部位を確認でき、鑑別疾患の視点からも重要です。

診断

治療

治療は罹患したペットの椎間板ヘルニアのグレードにより分かれます。私はグレード1~3の場合は内科治療を行っています。つまり、内服薬で症状の回復する可能性があるからです。内科治療はご自宅で安静に過ごして頂き、内服薬を投薬していただきます。ただし、グレード3で症状が継続する場合には外科治療を選択することもあります。

グレード4~5の場合には外科治療を行っています。つまり、内科治療では回復の見込みが低いからです。外科治療は先程の絵にも示した通り、脊髄神経を圧迫している椎間板物質を取除く作業です。実際は椎間板ヘルニアの場所を特定して、皮膚、皮下組織、筋肉、骨とと進んで椎間板物質に到達することが出来ます。 手術終了後は入院になります。また、手術は歩行可能になることを保証して行う治療ではありません。手術が成功しても脊髄神経の回復が得られないほどの障害があれば、起立や歩行はできません。重症度の高いグレード4や5の症例ほどその確率が高くなります。

椎間板ヘルニア手術の詳細はこちら

脊髄軟化症(脊髄融解症)

椎間板ヘルニアを発症した犬において、極稀に脊髄融解症を誘発することがあります。この疾患は、椎間板ヘルニアを起こした脊髄神経部位から脊髄神経が軟化・融解してしまう病気です。融解は脊髄神経を上行、下降して広がり、やがて呼吸中枢にも上向することで呼吸困難になり予後不良となります。グレードが高いほど発症率は高まりますが、低いから発症しないとも言えません。さらに、これは進行して7~10日後に発症する特徴と手術中において脊髄神経に肉眼的変化が認められない特徴があります。そのため、その発症は手術後になりますので注意が必要です。

予後

内科治療も外科手術後も基本的には安静にして頂いていますが、外科治療後は、少しづつリハビリを開始します。自力で起立し始めた場合は、徐々に改善傾向を示しますのでリハビリはお勧めしていません。また、椎間板は頸部から腰部まで幾つもありますので、別の部位に椎間板ヘルニアを発症することはよくありますので注意が必要です。私自身も複数回の椎間板ヘルニアの手術をした経験があります。特に寒い冬は多発傾向になりますので部屋を暖かくするなどの工夫も必要です。

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